がんとつきあう
腹水濾過濃縮再静注法(CART)
がん性腹膜炎による腹水への対策
30年ほど前から保険が適用されている、腹水濾過濃縮再静注法(CART)と呼ばれる治療法があります。
この治療法は、患者さんの腹部から抜いた水を、0.2μm以上の物質を通さない性質の濾過器にかけて、身体に必要な栄養分と細菌・がん細胞を分離し、栄養分だけを含んだ水を取り出します。さらに栄養分を除水器に通して濃縮し、これを患者さんの静脈から点滴するのです。
こうすることで、本来は排出すべきでなかった栄養素を患者さんの体内に戻し、細菌やがん細胞など身体に毒となる部分だけを体外に捨てることができます。
もともと体内にあったものを注入しているだけなので、大きな副作用の心配もありません。腹水が溜まったことで生じていたお腹の張りや呼吸困難が改善するのはもちろん、栄養素を失わずに済むので必要以上に体力を消耗することがないのです。
そのため、食事を摂れるまでに回復し、闘病意欲が向上する患者さんもいるようです。
従来は腹腔ドレナージ(腹水穿刺)で水抜きする方法が主流でしたが、この方法ですと、本当ならば排出すべきでない電解質やタンパク質まで体外に出てしまいます。これでは患者さんの栄養状態を悪化させることになり、免疫力低下のリスクが生じてしまいます。
また、腹水は一度排出したところで数日中には再度溜まってしまうので、水抜きだけでは、その場しのぎにしかならないという問題もありました。
こういった従来の手法に変わって現在、腹水濾過濃縮再静注法(CART)が注目されています。
新しい技術「KM-CART」
これまで、がん治療においてがん性腹水を「ただ抜く」ことは腹水内にある必要な成分も一緒に捨ててしまうことになるため、症状が悪化すると考えられていました。
「CART」は30年前から、主に肝硬変などに伴う肝性腹水の治療に、ごく一部の施設で行われており、がん性腹水の治療でも試されておりましたが、がん性腹水には肝性腹水より遥かに多くの血球成分やがん細胞が含まれているという特徴があり、技術的に対応が困難でした。
しかし、研究を重ねてがん性腹水の治療に対応できる「KM-CART」が開発され、最近注目を集めています。
その「KM-CART」の開発者、松崎圭佑先生のインタビューはこちら≫≫
PICKUP:がんと免疫の深い関係
健康な人でも体内では、1日に約5000個の細胞が“がん化”していると言われています。しかし全ての人ががんになるわけではありません。それは、風邪のときと同様に、私たちの体に生まれつき備わっている免疫の力によって、がん細胞を排除する機能がきちんとはたらいているからです。
しかし、細胞のなかにある遺伝子が何らかの影響で傷ついてしまい、修復できなくなるとがん細胞へと変化していきます。免疫の力が正常に働いている場合は、がん細胞が増えることはありませんが、免疫力が弱まったり、加齢などによって衰えたりすると、がん細胞の増殖を抑えることができずに、がんが大きくなって正常な細胞の働きを阻害するようになっていくのです。
そこで、免疫の力を強化することでがん細胞を抑えようとする最先端の治療が開発されています。これらは「がん免疫療法」と呼ばれ、すでに実地医療として行われています。最近では手術や抗がん剤、放射線治療に次ぐ第4の治療として、注目を集めています。



