
多くのがん患者さんが苦しむがん性腹水。現在のがん医療では「腹水は、抜いたら弱る」が常識であり、患者さんは我慢を強いられています。ところが、この辛い“常識”を覆す「腹水ろ過濃縮再生静注法(CART)」という治療法がありました。
最新のKM-CARTの開発者である東京・豊島区の要町病院腹水治療センター長の松﨑圭祐先生にお話を伺いました。
まず、いくつかケースを紹介しましょう。私が前任地の財団法人・防府消化器病センター(山口県)にいた時の話です。ある日、岡山県に住む50代の女性から「腹水を抜いてほしい」と連絡がありました。聞けば、卵巣がんの末期(ステージIV)で抗がん剤治療も断念、多量の胸水と腹水で肺と心臓がつぶれかけて、呼吸ができず意識がもうろうとしている状態で、しかも、主治医からは余命1~2日の宣告を受けているというのです。正直、これはどうかなと思ったのですが入院を承知し、すぐにKM-CARTを施行しました。その結果は劇的でした。第1回目治療の翌日には食欲が戻り、同じ治療を繰り返すうちに腹水の量も減ってきました。何よりも楽に動いて好きな物が食べられるようになったことで、俄然、生きる希望が沸いてきたのです。この方はその後、抗がん剤治療の施行により胸水、腹水ともにたまらなくなり、元気に退院されました。
また、ある60代の膵臓がんの方は、腹水が貯まって全く食べられなくなった時点で、主治医から緩和ケアを勧められました。「余命2~3週間」という状態ですよね。しかしそこで諦めず、四国から山口の病院まで数時間かけて来院、入院してKM-CARTを受けたのです。この方の腹水は20リットルもあったので、まず15リットルを抜き、9日後にもう一度試行してお家に帰っていただきました。それから3ヶ月後に本人から電話がかかってきたんですよ。驚いたことに、あれから腹水も貯まらず、抗がん剤治療を再開して仕事に復帰しているというのです。二例とも今までの「腹水を抜いたら弱る」という常識を根底から覆す典型的なケースです。古い常識を疑いもせず、研究を怠ってきた医師を叱咤する例であるかもしれません。がん性腹水の新しい常識はこうです。「腹水は、抜いたら元気になる」。







